報告者: ニールセン智子 (Satoko Neilsen)
遠田和子先生の「さらば『日本語が透けて見える英語』」に参加しました。
このセッションでは日本語と英語の違いを考えながら、課題文を使って英語の表現力をアップする練習を行いました。日本人による英訳がしばしば冗長であったり焦点がぼやけたりするのは、日本語のままの構文、語順、品詞を使って単に言葉を置き換えていることが最大の理由です。(「語順」と言うと語弊があるかもしれませんが、日本語の羅列をそのままの順序で訳すということです。例えば、「主アンテナを交換するため、作業員が実験室に立ち入る場合が多いが、増幅器と連動するドアのインタロック機構が備えてあると安心できる」を「In
order to replace the main antenna, workers often enter the lab, and thus it
is recommended...」のように、前置き的な「~、」の部分をそのまま訳すと何が言いたいのかよくわからなくなります。正解は「Workers often enter the lab to
replace the antenna. Their safety can be ensured by interlocking the door with
the amplifier」)単なる言葉の置き換えでない、言いたいことがダイレクトに伝わる英語を書くには、英語的なアプローチが必要です。
そのためセッションではまず、「英語らしさ」とはなにかということから考えました。それには例えば、SVO(主語、述語、目的語)がはっきりしていること(したがって英訳の際は主語が何かをよく考える)、日本語の状況描写に対して英語は動作描写の動詞が多いこと(英語にはBe動詞などの「弱い」動詞でなく、「強い」動詞を使う)、簡潔・明快であること(最少の語数で最大の情報を伝える)、日本語は詳細や背景情報が先にくるZOOM
INの言語であるのに対し、英語は核心情報が先にくるZOOM OUTする言語であること、また、日本語は否定表現が多いのに対して英語は肯定表現が多いことなどが挙げられます。
つまりこれらを意識して推敲することにより、英語らしい英語に近づきます。特に日本語の否定表現と英語の肯定表現の対比として「Remember
Pearl Harbor」が「真珠湾を忘れるな」、「You Only Live
Twice」が「007は二度死ぬ」、「雨ニモ負ケズ」が「Strong
in the Rain」といった例が挙げられ、興味深かったです。その練習として「危険なので、このドアを開けないこと」を「Danger」も「Not」も使わずに訳してください、というのがあり(正解は「For
your safety, keep this door closed」)、そのほかの課題文による練習も目からウロコでした。
私自身の仕事は専ら英日ですが「逆も真なり」で、両言語の特徴を意識するということは、直訳調にならない日本語を目指す上でも役立つと思いました。どのような翻訳であれ、「推敲を重ねる」ことがいかに大切かをあらためて認識させられるセッションでした。最後に、遠田先生が推奨された参考書として、Joseph
M. Williams著『Style: Toward Clarity and Grace』を挙げておきます。
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